「啓」は「ひらく」。「蟄」は「こもる」。「啓蟄」は漢字のとおり、今まで凍てついた土中が、解けて温んで啓き、こもっていた虫たちも、動き始める時季です。「虫」は昆虫だけでなく、蛙、トカゲ、蛇なども。生きものが目覚め、再び動き始め、いよいよ春の実感が増してきます。

・初候 蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)
・次候 桃始笑(ももはじめてさく)
・末候 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

ふくふくと啓蟄の畑耕されはじめて土踏むをさなごの足 喜夛隆子(歌人・ヤママユ編集委員)

虫も目覚める啓蟄、やわらかにふくふくと耕される土、その土を踏む幼児。子どもは歩き始めたばかり。そんな子どもが、初めて、土の上に立ち、踏むという、いのちの輝きにあふれたお歌。啓蟄という目覚めの季節の土の生命力に、幼子(をさなご)の成長が重なる、「いのち」を言祝ぐ素晴らしいお歌です。

喜夛隆子 歌人。ヤママユ所属。吉野出身の日本を代表する歌人、故、前登志夫の歌弟子としてその実力には定評がある。歌集に『国原の地図』他。最新歌集『柿の消えた空』(角川書店)には、奈良町にぎわいの家のために作った節気短歌、24首も所収。民俗も研究し著作に『フォークロアの畦道』などがある。