節気と聞いてピンとこない方も、秋分の日は祝日ということもあって、よく知っておられると思います。お彼岸のお墓参り、おはぎを作るなど、目にみえる形で暮らしに残っている節気ですね。秋分は昼と夜の長さが、同じです。つまり、秋分を過ぎれば、日が短くなり、どんどん、冬になっていきます。彼岸花の赤に真っ白な月。秋の本格的な始まりに、美しい色が少しずつ際立つ季節です。

初候 雷乃収声(らいすなわちこえをおさむ)
次候 蟄虫坏戸(ちっちゅうこをはいす)
末候 水始涸(みずはじめてかる)

逝きし人とことば交はして行く道の畦にひとすぢ彼岸花炎ゆ  喜夛隆子(歌人・ヤママユ編集委員)

亡くなった人に語りかける。言葉をおくれば、いない人もまた答えてくれるような、そんな気持ちで田んぼの畦道を歩いている。畦にはひとすじの彼岸花。亡くなった人の命の形のように、もえている、秋分のころ。実際には答えてくれない声に、語りかける時間のはるけさと、彼岸花の真っ赤な生命力。此岸と彼岸をつなぐ、鮮やかなお歌です。

喜夛隆子 歌人。ヤママユ所属。吉野出身の日本を代表する歌人、故、前登志夫の歌弟子としてその実力には定評がある。歌集に『国原の地図』他。最新歌集『柿の消えた空』(角川書店)には、奈良町にぎわいの家のために作った節気短歌、24首も所収。民俗も研究し著作に『フォークロアの畦道』などがある。